ジェベルハッタ見解

ウオッカの敗因は前が詰まったからだとされております。ラスト100mぐらいでは内側の進路が開き、そこを突いて武豊騎手も鞭を叩き追い出す動作を取れたことから、一様に前が詰まったからだと結論づけしてしまうのも、どうかと思います。しかしただでさえ繊細で神経質な競走馬のこと、インコースで抑圧され続ける展開に、走る気を無くしてしまったというような、微々たる可能性も否定しきれない部分は残るでしょう。まぁ何にせよウオッカが5着だったのは明々白々な事実。これが前哨戦で良かったとするべきでしょうし、元々、休み明け初戦の成績の芳しくない馬だっただけに、この着順でも本番に向けては、悲観するべき内容でもなかったはずです。
「前が詰まったから」という、ステレオタイプな見解を当ブログでは物すつもりは毛頭ございませんで(充分に物したけれど)、ここでは少し角度を変えたレース考察をば。邪推にもなりかねない、独りよがりな考察になってはしまいますが。だって武豊のコメントがまだなんだもん(苦笑)

考察

発馬の良いウオッカは今回も好スタートから先団に難なく取り付きました。ペースは恐らくスローで、掛かり癖のあるウオッカは前を壁にしながら追走するのがベターな展開。現に武豊騎手もそうしたように、こと折り合いをつけるという点に関してはベストな騎乗が出来たと見て良いでしょう。
逃げたのは大方の予想通り、実力馬ジェイペグ。ウオッカはこの馬の真後ろに付ける最内4,5番手ぐらいからの競馬となりました。逃げ馬の真後ろにつけるのはリスクを伴うもので、もしその馬が早めに脱落して来ようものならば、その巻き添えをモロに食らい、自分もその馬とお付き合いしながら、後方に下がらざるを得なくなる危険性を孕んでいます。ジェイペグは直線必ず伸びてくるもの。その確信が武豊騎手にはあったのではないでしょうか。もしそうだとすれば見事という他ない読み。ジェイペグの伸び脚は直線を向いても衰えず、後続各馬を引き離しに掛かる勢いを見せ始めました。
前が詰まったウオッカ。その直接的原因は2番手につけたラシアンセージが、思いのほか伸びたことです。そしてそれこそがウオッカ最大の敗因です。ジェイペグの国際レーティングは120。ラシアンセージは108。遥かに格下と思われた馬が遥かに格上のジェイペグに食らいついたがために、ウオッカの本来とるべき進路がまるで開きませんでした。勝ったのは大外を強襲したバリアス(牡57.0kg)でしたが、このラシアンセージは結局最後まで粘りきり、ジェイペグと2着を分け合う同着でした。
「前が詰まったから騎乗ミス」という論調に疑義を申し立てるつもりはありません。むしろ正論だと思います。しかしながら、ここからは少し話がずれるかもしれませんが、「内を突いたから好騎乗」「大外をぶん回したから騎乗ミス」、これにははっきりと疑問を呈させていただきます。
内を突く最大の利点がコースロスを防げることなのは言うまでもありません。そしてその恩恵に与るために内側に各馬が殺到するのは自明の理だといえるでしょう。しかしながら前述した通り、内側を通るリスクは果てしなく大きい。人気馬でそれを実践しようものなら、ただでさえマークの厳しい中、他の騎手がやすやすとインコースで有利なレースをさせてくれるわけもないでしょう。インコースを突くのは余程の確信と的確な読みがない限り、私には運任せのギャンブル的行為だとしか言いようがないのです。
武豊騎手の今回の騎乗が私の推察どおりだとすると、直線を向くまでは素晴らしい騎乗。しかし、格下と思っていたラシアンセージの実力を見誤り、直線充分な進路を確保できなかったという点で、読み違い、そしてやはり騎乗ミス。という評価になります。ですが、もしラシアンセージの騎手がウオッカに1頭分以上の進路を献上するようなコーナリングをしていたら、今回の武豊騎手の騎乗は間違いなく素晴らしい騎乗として絶賛されていたことでしょう。それはやはり運任せに確保できた進路。他力本願で得た利。それをして「内を突いたから好騎乗」「大外ぶん回し」など、私からはピントのずれた暴論としか聞こえてきません。
だいぶ脱線しましたね(苦笑)。はじめの方でも記しましたが、ウオッカが5着に敗れたのは事実。しかし、休み明け初戦に斤量57.5kg。前が詰まったこと以外にも敗因は挙げられますし、それらは全て本番に向けて好転する材料なわけですから。敗れたことは素直に残念ですが、本番に期待したいと思います。