フローラS

大外を強襲したベッラレイアが制覇。デビュー戦でセンセーショナルな印象を残した同馬は誰の目にも「クラシック候補」に映ったはずでしたが、功を焦った陣営は1勝馬の身の上でいきなりの重賞挑戦をこの馬に課そうとし、結果として除外続きの憂き目にあいローテーションの狂いをもたらせてしまいました。大失敗。自己条件からコツコツと賞金を積み重ねさえすれば桜花賞にも間に合ったはずの素材。ダイワスカーレットウォッカの強豪2頭に割って入るシーンさえ想像出来ました。
過ぎたことは忘れるべし。中京の500万下で2勝目をあげるやいなや早々にオークスへと矛先を向けたのは英断でした。今度はジックリ構えて迎えたこのフローラSにおいて、果たしてベッラレイアの底知れない能力は関東のファンの前にお披露目されることとなったのです。内枠から好スタートを切るも前が壁になって後手に回らされる展開。更にスローな流れにもやや行きたがる素振りを見せるベッラレイアは直線まで終始後方集団での競馬を余儀なくされました。残り300mほどでようやく大外に持ち出されると先頭を快走するイクスキューズははるか前方。「届かない」と誰もが息を飲んだシーン。しかし同時に「いや、もしかしたら」という思惑が去来する。それが周囲が寄せるベッラレイアという馬への期待。秋山真一郎騎手に追われ一完歩ごとに差を詰めてくるシーンがターフビジョンに大写しにされると東京競馬場はもう怒号のような大歓声。ゴール前で全馬をまとめて差し切った瞬間には「凄い」という溜め息にも似た賞賛の言葉が次々と飛び交っていました。
戦慄の豪脚に沸いた観衆の期待は、1ヵ月後のオークス制覇へ。しかしながら今回マイナス4キロの馬体重が示す通り、本番へは馬体の細化が心配されるところです。除外続きの中でも常にレースで結果を出してきたベッラレイアに、今度は厩舎陣営が腕の見せ所となるでしょう。
2着ミンティエアーは抜群の競馬センスを見せました。馬ゴミに入っても怯まず騒がず、針の穴を縫うように馬と馬の間を割って抜け出せる器用さは混戦でこそその真価が発揮されるはずです。ベッラレイアがいなければ必勝体制のイクスキューズをゴール直前差し切った新星として勇躍オークスに挑むことになっていたと思われるだけに、侮ってはいけない1頭には間違いありません。その絶好の展開に持ち込んだイクスキューズは完敗。2000m前後の距離ではこの程度の馬ということでしょう。オークスでの逆転も難しいです。体調さえよければ適距離となるNHKマイルCに向かうべきです。