引退

ディープインパクトの年内引退がこのほど発表されましたが、どうも関係者のコメントを聞くに、将来を決めるための充分な議論が交わされた様子が感じられず、あるいは馬主が一方的に下した決断なのではないかという疑念が頭をもたげてきます。一方で繁用先やシンジケートの総額が同時に発表されたことによって、馬主と生産者である社台グループとの間では、逆にきっちりと話し合いの場が持たれたように感じます。考えようによってはこの引退は、馬主、調教師、双方の円満の中で発表されたものではないとも受け取れ、前代未聞のケースなのかと心配をそそられますが、まぁその話は置いておいて。。。^^;


ディープインパクトは個人的に、日本競馬史上最強のサラブレッドであると考えております。長年競馬を見てきましたが、ここまで完成されたフットワークで駆け抜ける馬は見たことがなく、なおかつ桁外れの心肺機能に、出遅れだろうがはや仕掛けだろうが関係なく、他馬をぶっちぎってしまうレースぶりは、ベースアップされ着差のつきにくくなった近代競馬における奇跡であると感じていました。
凱旋門賞の敗因に関しては様々に議論が交わされておりますが、力を出し切って敗れたものではない、この経験が来年に生きるはずだ、と、考えていた私にとって、年内引退の決定が心より残念でなりません。日本史上最強馬が3着という成績で終わって欲しくはなかった。世界制覇の夢を、もう一度見たかった。それが本心です。しかし、引退することにより、日本史上最強馬の遺伝子が「無事」に受け継がれていくことになる、そのことに関しては、逆に「良かった」という思いがあります。テンポイントサイレンススズカなど、引退後の将来を約束された名馬たちが、悲劇に散っていった例は枚挙に暇がありませんので。それに、このブログのID「DEEPIMPACT」は彼が新馬戦を勝利したばかりのころに取得したものであり、デビュー直後から追いかけていた、大好きな馬が無事に引退を迎えることが出来る喜びも入り混じります。要するに、複雑な気持ちなのです。


競走馬ディープインパクトの残された時間は少なくなりました。年内引退ということで、来年に向けたお釣りは残さないと思われますから、天皇賞出走も現実味を帯びてきました。とりあえずは、もう2度と見ることは出来ないだろう、その完成されたフットワークを目に焼き付けることにしましょう。くれぐれも故障のないように、「無事」にと祈りながら。