Go to the Dubai

毎年豪華メンバーの集いと銘打たれるこのレースではありますが、今年は例年に違わぬどころか、史上最高レベルのメンバーが揃ったといって間違いないでしょう。1番人気に推されたカネヒキリは舞台となった東京1600mがダート戦で唯一の黒星を喫した条件であり、JCダートでのあわやの勝ちっぷりと当時よりも2kg増となる斤量57kgが嫌われ、ややその実力を疑われた格好での単勝270円の評価。更にどの馬に騎乗しても過大評価を受ける武豊鞍上を加味すれば、絢爛豪華なダート巧者が揃ったこのG1レースにおいて、カネヒキリははっきりいって「危うい人気馬」でした。
圧勝に繋がった要因は何か? 結論からいえばカネヒキリの「成長」です。
スタート後しばらくは芝コースを走る東京1600mの舞台はカネヒキリにとって武豊が認めるとおりダッシュがつきにくく「よくない」。しかしこの日のカネヒキリは見違えるような出脚を見せ、周囲を見渡しながら位置取りを決められる余裕すらありました。結果、中団の外めというペース次第で自在に動き出せるし我慢も出来る、前の馬にも後ろの馬にも目を向けられる絶好の位置をキープして流れに乗りました。この優等生を絵に描いたような競馬は、「ドバイの速いダートに対応できるように」という目論見から施された、角居調教師によるこの中間の芝コース調教によってもたらされたカネヒキリのレース振りの「成長」でした。
直線を向いてからの圧巻のパフォーマンス。これはもっと分かりやすい、カネヒキリ自身の競走能力の「成長」に他なりません。直線半ばで前を捉えると出走馬中ダントツの上がり3ハロン35秒7を繰り出し、ゴール板では2着シーキングザダイヤに3馬身の大差(JCダートではハナ差)。勝ちタイム1分34秒9はレコードでないとはいえ、時計の掛かりがちな馬場を考えればそれに匹敵する内容。終わってみればカネヒキリが苦労するであろうと思われた東京1600mがこの馬のとてつもない底力を証明する舞台となり、苦戦するであろうと思われた絢爛豪華なメンバーが全てこの馬の引き立て役でしかなかったという、皮肉でこそあれ何とも痛快な結果となったのです。
最強の称号を手にしたカネヒキリの次なるターゲットはドバイワールドカップ。過去日本からは幾多の名馬たちがダート最強の称号を手にし「この馬ならば」と期待されながらも、その大いなる壁の前に儚く砕け散りました。まだまだ後進国に甘んじている日本のダート路線において、恐らく世界で最も勝つのが困難であろうレースがドバイワールドカップ
ドバイ仕様に「成長」を遂げたカネヒキリにとって、その目線に見据える壁はやはり聳え立つように高いのか、それとも・・・。
答えは3月25日に出ます。