春の息吹

まだ戦後間もない頃の昭和26年。無敗で2冠を制し3冠も確実といわれた矢先、突如としてこの世を去った幻の名馬トキノミノル。その功績を称え名を冠したのが共同通信杯3歳S。勝ち馬は幻の名馬が敷いた轍を目撃します。クラシックに直結する登竜門として重要なレースです。


春まだ遠い冬枯れの季節のさなか、今年は例年以上に絢爛豪華、多くの素質馬が顔を揃えました。昨年度2歳王者・フサイチリシャールが早くもここで始動します。父クロフネに母フサイチエアデールという超のつく良血馬。デビュー戦こそ4着に敗れるものの、その後は破竹の勢いで4連勝。一気にG1のタイトルを射止めました。センス溢れるレースぶりはどんな展開にも対応できる柔軟性があり、どんなタイプの馬が相手でも安定した競馬で実力を発揮出来るはずです。これだけの実績(重賞2勝)をおさめていながら57kgで出走出来るのは本当に恵まれました。王者の威厳に賭けても、恥ずかしいレースは出来ない立場です。
レベルが高いといわれている昨年札幌2歳戦線で頭を張ったアドマイヤムーンは、今回武豊騎手を鞍上に拝してきました。前走ラジオたんぱ杯2歳Sではサクラメガワンダーの直線一気に苦杯を舐めましたが、休養明けを考えれば上々の内容。今回は叩き2戦目で磐石の態勢を整えたはず。管理する松田博調教師はこの馬で勝てなければ自分はクラシックに縁がないといいます。ベガなどを育てたベテラン調教師が絶賛豪語する実力。こちらも恥ずかしい競馬は出来ないところです。本番でお手馬にフサイチジャンクのいる武豊騎手が騎乗してくれるかどうかも、この1戦にかかっているといっても過言ではないだけに、生半可な仕上げでは出走させてこないはずです。
新潟2歳王者ショウナンタキオンは試金石です。前走・朝日杯FSは休養明けプラス前残りの展開で差し脚を発揮できませんでした。東京コースに変わる今回はそれが生きるはず。叩き2戦目で体調も万全です。しかし、この馬、慢性的な出遅れ癖がある上、今のところ脚質に幅がない印象で、やや当てにならない部分があります。賞金的にクラシック出走権は確保している身なので、今回は本番を見据えた練習台とするのが懸命でしょうか。しかし、その切れ味が発揮された時はやはり侮れない存在です。
新興勢力ではマッチレスバローが一番手。デビュー2連勝はいずれも圧巻の差し。他馬とはレベルが1つも2つも違うというような強烈な印象を与えました。新馬戦で3馬身切り捨てたマイネルシュピュールが先週のゆりかもめ賞を勝ちオープン入りしたことで、間接的にこの馬の評価も上がりました。昨年のこの時期、桜花賞候補の1頭に上げられたパーフェクトマッチを姉に持つ血統構成も魅力充分。ここを勝っていきなり主役級に躍り出たとしても不思議ではありません。


競馬ファンは競馬の番組で季節を知るといいます。冬の寒さが厳しい時期がまだまだ続きますが、クラシック候補生が激突する共同通信杯3歳Sにはどこか春めいた陽気を感じさせてくれます。それは皐月賞、そしてダービーを思わせる今は遠い熱気なのかもしれません。お寒い結果にならないことだけを祈りますが、はてさて・・・