血の因縁

フサイチリシャールは父クロフネジャリスコライトアグネスデジタルの弟。両馬とも超のつく良血馬ですが、01年、秋の天皇賞での外国産馬出走権争いの因縁がこの2頭の間に横たわっている、そんな背景も見逃せない1戦になりました。
01年度天皇賞に出走できる外国産馬に用意された椅子は2つ。1つは同年の宝塚記念を制したメイショウドトウが前哨戦を使わずして座ることが決まっていました。残る1つが激戦でした。出走権を与える上で注視されたのが過去1年間における獲得本賞金総額。春のG1NHKマイルカップ毎日杯を制したクロフネは、本来であれば難なく天皇賞にエントリーを果たしていたことでしょう。しかしその賞金を上回り天皇賞の出走権を得たのは前年度マイルCS勝ち馬アグネスデジタル。不振が続いた春シーズンに加え、秋は正規の路線からはずれ、ダートで勝ち星と賞金を積み重ねてきた臨戦過程に対して、芝コースで実績を残してきたクロフネこそが天皇賞出走に相応しい馬だという内外からの非難の声が多数上げられました。その声は天皇賞出走をあきらめ、ダートの武蔵野Sで日本レコードの圧勝劇を演じたクロフネの強さにより更に大きなものになり、アグネスデジタル天皇賞世紀末覇者テイエムオペラオーを真っ向から下したことにより沈黙しました。しかし、もしクロフネ天皇賞に出走していたら?という疑問符は今もって頭をもたげる“タラレバゴト”となっています。
ただ、天皇賞当日はクロフネが苦手とされているドロドロの不良馬場だったし、もし天皇賞出走が叶っていた場合、彼がダートで伝説をつくることもあり得なかったわけで、そんな議題自体不毛な事柄に過ぎないのでしょうが。
そんな血の因縁が巡った先日の朝日杯フューチュリティーステークスでの両馬の対決。両雄並び立たずの格言どおり、残念ながら1騎討ちとはなりませんでしたが、無限の素質を感じさせる駿馬の両頭には今後更なる成長を遂げてもらい、より崇高なる舞台で再び雌雄を決して欲しいものです。