王者は能力を発揮できたのか

後方一気を決めたのはハットトリックでした。
王者デュランダルと並ぶ末脚自慢として知られる存在のハットトリックでしたが、その脚質は同じ追い込み馬であるとはいえ似て非なるものです。デュランダルが一瞬の決め脚と俊敏な反応のよさを特徴としている一方、エンジンの掛かりが遅く切れるといういうよりは速いタイムを連続してたたき出すのがハットトリックの特徴であるようです。動きたいところで動ける反面、ラストの脚の使いどころがシビアな前者と、早めに仕掛けられる反面、動きたいところで反応が鈍い後者、どちらが騎手にとって乗りやすいのかは分かりませんが、とにかく追わせる馬に対して豪腕のオリビエ・ペリエを鞍上に迎えたことがハットトリックの勝因であるように思います。
デュランダルの敗因は何でしょう。
凡走ではないという向きもあります。確かにマイルの走破タイムは過去最高(1分32秒5)だし上がり3ハロンも33秒2と出走馬中最速。しかし過去2年のように他馬を一瞬のうちに置き去りにするような勢いは最後まで感じられませんでした。そもそもタイムなんてものは馬場状態や展開などによって右にも左にも変動するし、速いか遅いかなんて事柄は本来他の馬との相対的なタイム差に対して判断を委ねるべきものであるはず。マイルCSの1つ前の京都10R古都S(2200m)では勝ち馬のアドマイヤフジが上がり3ハロン33秒5を掲示しました。先週のエリザベス女王杯でのスイープトウショウは33秒2です。それを踏まえると今回のデュランダルが自身の持ち味である極上の切れ味を発揮できたかどうかは必ずしも言い切れない部分が残されてあります。
それまで安定した成績を残していた馬が次のレースではいきなり凡走するのが競馬です。それだからこそいまだ同一のG1レースを3連覇した馬が現れていないともいえないでしょうか。