ドバイの憂鬱

ドバイミーティング参戦の日本馬3騎はバンブーエールの離された4着が最高でほぼ惨敗に等しい結果に終わりました。ここでは主にウオッカのことについて触れて行きたいと思います。
ウオッカはいつもどおりの好発馬から武豊騎手がほぼ馬任せにテンの数百メートルを進み、自然と2番手を追走する形となりました。一部で報道されております「手綱を動かして積極策」は間違いです。内ラチ2、3頭分外を回り、グラディアトゥーラスが後続を引き離して逃げたため、ほぼ単騎で進むことが出来絶好の展開でした。折り合いを欠く面も殆どなく、ことレース振りに関してはこれまでで一番上手だったように思います。直線は快調に逃げるグラディアトゥーラスを追いかけ、ジェイペグ以下3番手集団を千切り捨てんばかりの勢い。ゴール前200mぐらいから武豊騎手の鞭が飛び、勝利は完全に射程圏に入ったかに見えましたが、そこから、失速。グラディアトゥーラスには逆に離され、追い込んできた後続各馬にはあっさりと交わされていく始末。最後は7着に流れ込むのがやっとでした。
戦前「逃げても良いぐらいの気持ち」とマスコミに語っていた角居調教師。離れた2番手でレースを進めたことに関して具体的に触れたわけではありませんが、結果はともかく「パーフェクトな騎乗」と賛辞を送りました。僭越ながら私もこれには同感です。先行集団でレースを進めるのは安田記念や昨年のJCと同様。前者においては圧勝しており、後者では終始掛かり気味の追走となりながらも粘りこんで3着。今回のレースでは折り合いもついて安田記念を再現するかのような道中で、仕掛けも完璧だったと思います。結局逃げた馬が勝利したことにより、展開云々の言い訳も焼け石に水ウオッカはレース後、全力を出し切った(疲弊した)様子だったことからも、直線でレースを止めてしまった訳でもないでしょう。
敗因を突き詰めれば角居調教師の言葉どおり「力が足りなかった」とする以外にありません。今回のウオッカの海外遠征は、若き名伯楽角居調教師に「馬作りを根本から考え直させられる」ほろ苦い経験を与えたようです。
角居調教師はインタビュアーの「これからもウオッカの戦いは続いて行きますよね?」との問いに「どうですかね」と言葉を濁しました。年度代表馬を受賞し国内戦でやり残したことは殆どなく、繁殖シーズンにも滑り込める状況の今だから、引退の二文字がちらつくのでしょう。今後の動向に注目が集まりますが、私個人としましては「ウオッカが海外に通用しなかった」という事実の方が一夜明けた今でも鮮明に残されていて余韻が消えません。海外の高い壁を思い知らされた、衝撃のドバイミーティングでした。