ぶっきらぼうな文章で英雄の偉業を振り返る

昨秋ディープインパクト菊花賞を目前に控えた当ブログでミスターシービーを取り上げましたが、伝説的とも呼べるあの向こう上面捲りを引き合いに出し「ディープが3冠を達成してもあの一種異様なインパクトには及ばないであろう」というようなことを書き綴ったと思います。そんな僕はどうやら見る目がまるでなかったようですね。天皇賞でのディープインパクトは間違いなくシービーを超越していました。
3000mで行われる菊花賞と3200mで行われる天皇賞春。僅か1ハロンに過ぎぬ距離の違いはレース展開や要求される総合力に関して言及すれば「過酷である」という意味で異なるようです。すなわち天皇賞はまともなペースで流れさえすれば距離のごまかしは利かなくなるレースであるということです。ディープインパクトのたたき出した3分13秒4のレコードタイムは97年にマヤノトップガンが記録したレコードを1秒更新するもの。トップガンの記録がそれまでのレコードを2秒7更新した当時でいう(いや今現在でも)驚異的なレコードタイムだったことを考えれば、ディープのタイムは取り立てて絶賛する対象となるわけです。しかもディープは一見無謀ともいえるようなレース振りで、しかもごまかしの利かない3200mのG1でそのレコードを樹立してみせた。今回の圧勝劇を受けて史上最強馬論が各メディアで再燃しましたがとりあえず少なくとも「史上最強ステイヤー」とは呼んで差し障りないような気がします。
ディープの最大の武器はその瞬発力ですが類稀なる持久力が加わって「鬼に金棒」となっています。どれだけスローペースに流れようが騎手の判断ひとつで早めのロングスパートを決められるどころか、それが他馬とはまるで比較にならないような瞬発力で繰り出せるとなれば、どれだけ先頭集団とのビハインドがあろうとも一瞬のうちに距離をゼロに縮めることが出来る。逃げ馬か先行馬がディープ打倒の最右翼になるであろうとはよくいわれますが、こんな戦法をとられてしまってはたまりません。更に言えばディープインパクトが「動く」ところは他の大抵の馬にとっては「待つ」ところなわけで、そのスパートについて行こうものならタイミングを狂わされ最悪の場合潰されてしまい兼ねません。
ぐうの音も出ないとはまさにこのことです。