エリザベス女王杯

天皇賞の時の更新でしたか。池添謙一騎手の俗に言われる「切れる馬」に対する技術の確かさについて語ったことがあると思います。名刀・デュランダルを駆った一昨年セントウルS以来、彼の「切れる馬」の瞬発力の生かし方、その感覚は冴えを増す一方です。
スイープトウショウエリザベス女王杯制覇も彼の好騎乗なしではありえなかったことでしょう。レースは序盤からオースミハルカが各馬を引き離して逃げ、戦前より逃げ宣言をしていたはずの外国馬サミットヴィルが抑えたため(行けなかった?)、ハイペースを予想していた有力各馬が極度のスローペースの中団子状態になる展開。前半1000mを60秒ジャストという逃げは絶妙なペースでオースミハルカが直線で2の脚を使えたのは当たり前の話。他の出走各馬が適性ペースを守れなかったがために前残りになることはレース中盤ぐらいより誰に目にも明らかな様相を呈しました。スイープトウショウは中団後方の内目。辛い展開のように思えましたが池添は焦らず騒がずスイープの末脚を信じ追い出しのタイミングを待ちました。迎えた直線。グングン加速するオースミハルカははるか前方。10馬身近くある差に池添自身「届くか」という不安の念を抱いたといいます。しかしそれでも池添は焦りませんでした。壁を避けて外に持ち出すと徐々に手綱を引き絞ります。そして残り200mで鞭の連打。これは宝塚記念の騎乗と同じ。それに応えたスイープトウショウはとてつもない切れ味を発揮してゴール間際に見事オースミハルカを差し切りました。
終わってみれば春のグランプリホースの貫禄。当たり前の結果だったかもしれませんが、何があるか分からないのが競馬であり、展開一つで生き物のように右に左に結果も動くもの。オースミハルカ川島信二の作り出したペースは絶妙そのものであり目の前に立ちはだかる絶対的な能力の壁をも打ち壊すものでした。しかし池添の好騎乗はその更に上をいきスイープトウショウの極上の切れ味が合わさって不確定要素の強さを裏付ける展開の不利をも跳ね除けました。
来週はその池添を覚醒させた名刀・デュランダルの出番です。その切れ味とともに手綱捌きにも注目しましょう。