天井知らず

「遅れてきた大物」と称したらよいのでしょうか。
7歳の秋を迎えたサンライズペガサスが最高の舞台に立とうとしています。同じレースでも中山が舞台だった4歳で迎えた秋の天皇賞とは違います。舞台は府中の2000m。よもやの早仕掛けから直線末脚を失う騎乗ミスで逃した過去唯一にして最大のチャンスから3年。脚部不安に見舞われ再びターフに戻れるかどうかも分からなかった屈辱の日々から解き放たれ、今また更なる好条件でその時を迎えようとは。
3年前は勝ち馬が強かった。敗因をそう括られてしまってはサンライズペガサスにとって失礼に当たります。怪物クロフネを抑えた神戸新聞杯の実績や2冠馬エアシャカールをひと撫でに斬って落とした産経大阪杯の剛脚など、およそ天井知らずの能力は誰の目にも驚異の的として鮮烈に映ったはずです。中山の天皇賞。直線他馬に差されることなどあり得ない。しかもそれがステイヤーナリタトップロード相手だったならば尚更です。歯車が狂う。浅屈腱炎の発症。騎乗ミスで敗れた秋の天皇賞は、サンライズペガサスの競走馬人生において大きなマイナスをもたらす分岐点となりました。


不治の病の前に強者はこうも弱く儚いものになってしまうのか。戦列復帰後数戦、不本意な成績を繰り返すサンライズペガサスに待っていたのは故障の再発、みたびの休養でした。石坂調教師は遅々として進まぬ回復状況に引退を考えたと言います。しかし、あの天井知らずの能力にもう一度夢を託すべく、復活に向けて尽力を注ぎ込む決断を下しました。05年2月の京都記念サンライズペガサスは03年のJC以来約1年4ヶ月ぶりの出走を果たしました。無事に走り終えた次走、叩き2戦目の中京記念。手応えよく進んだ道中、直線大外から強襲した剛脚はまさにサンライズペガサスサンライズペガサスたらしめる破壊力。メガスターダムの前に敗れはしましたが、復活への狼煙は高々と上がりました。
そして産経大阪杯。3年前に2冠馬エアシャカールに完勝したこのレース。ファンはそのパフォーマンスを覚えていました。1番人気。幸英明を鞍上に道中中団から直線その支持に応えるかのごとく横綱競馬で堂々と抜け出し快勝。3年前をあるいは上回る内容での完勝。苦労の末に掴んだ勝利に石坂調教師は人目をはばからず涙したといいます。天井知らずの能力は見事完全復活を遂げました。
その後のG12戦はいずれも不本意な結果に終わりましたがその敗因は明白。春の天皇賞は距離適性の差、宝塚記念は勝負どころで前が壁になる不利によるもの。毎日王冠でみたび披露した横綱競馬がそれを証明しています。


最重要とされる前哨戦を快勝したサンライズペガサスはデビュー以来最もG1に近い位置にまで辿り着きました。並みいる強豪と脚元への不安と、2つの敵との戦いは過酷を極めることになるでしょうが、登りつめるだけの準備は整っています。府中2000mという絶好の舞台で天井知らずの能力がいよいよ爆発します。

やはりサンライズペガサスを称するには「遅れてきた大物」という表現がピッタリなようです。