日本ダービー2

勝ったロジユニヴァースは無難な発馬から3番手の内目をやや行きたがるような素振りを見せながらの追走。ジョーカプチーノが常識外の大逃げを見せていたため、実質ややハイペースを刻みつつ単騎で逃げる形となったリーチザクラウンをピタリとマーク出来る位置となり、ラジオNIKKEI杯と全く同じようなパターンとなりました。更に直線でこれを早々に抜き去りラストまで脚色衰えることなく伸び切って見せ、最後に4馬身の差を付けてゴール板を通過するところまでもが同じという結果。ラジオNIKKEI杯は只でさえ時計のかかる傾向にあった阪神開催のそれも最終週の馬場で、同レース歴代3位のタイムをたたき出しましたが、今回は直前のスコールのような暴雨によりダービー史上例をみないほどのグチャグチャの不良馬場。当然時計もそれ相応に要することとなりましたが、馬場を問わず力強く伸び切り、自身の持てる能力をどんな悪条件であろうとも同じように発揮出来るのは実力を何よりも証明します。文句なしに世代の頂点。そして栄光のダービー馬に相応しい勝ちっぷりでした。
2着に敗れたリーチザクラウンはほんの若干出負け気味のスタートながらも武豊騎手が上手に前に促して先行体勢へ。一度は完全に先手を取り切るかのように思えましたが、NHKマイルCとは一転してテンションの上がり切ってしまったジョーカプチーノが常識外のスピードでグングン後続との差を引き離し、結局は2番手。皐月賞ではここからでも引っ掛かってしまいましたが、鞍上が馬を抑え込む仕草を見せたのは1コーナーのほんの数秒ほど。今回はピタリと折り合い速いペースを刻みながらも気分良さそうに走るリーチザクラウンの姿が画面に映し出されていました。極度に悪化した馬場や初めてレースで着用した面子の効果もあったのでしょうか。終始利口なレース振り。ハイペースで折り合いを欠いた前走はやはりこの馬の能力を測るには全くの参考外で、ペース如何に関わらず息の入った走りさえ出来れば、やはり強い馬。このハイペースでも2着に粘り込んで見せたのがその何よりの証明です。ロジユニヴァースには完敗でしたが、秋競馬へ向けた展望は極めて明るいと言えるでしょう。
3着に伏兵アントニオバローズ。この馬を手がけている陣営はもとより、フジキセキジャングルポケット等幾多の名馬の背中を知る角田晃一騎手がほれ込む逸材。騎乗馬に的確な判定を下し、時に求める物が多すぎて辛口にもなりがちな鞍上が、この馬の能力を評するに手放しの賛辞を送っていることそれこそがもはやすでに、この馬のG1級の能力を証明しているといえるのかもしれません。常に遊び遊び走ってしまい、弱い相手だと脚の違いから早めに抜け出してしまい、気を抜いたところを後続馬に差されてしまう。プリンシパルSの内容がまさにそれで、ダービーでは相手が強くなるからそのようなことはないだろうとしたレース前コメントも有言実行されました。レースに対してもっと前向きになりさえすれば、この秋、上位2頭を脅かすどころでは済まされないでしょう。
4着ナカヤマフェスタは後方待機組の中では最先着。ペースが流れ極悪馬場とはいえ追い込みが利く展開でしたが、力及ばず。上位3頭を誉めるより仕方がないでしょう。余談になりますが、上位4頭は全て皐月賞惨敗組で、馬体の細化や中間一頓挫あった馬達ばかり。ダービーに向けては順調な臨戦過程を送ることが出来ていただけに、人気の割に実は極めて順当な結果だったといえるのかもしれません。
5着アプレザンレーヴ。東京2400m重賞の勝利経験と底知れぬ能力を感じさせるレース内容が魅力で支持を集めましたが、まだまだ実力不足でした。しかしこの馬も秋になれば楽しみな一頭に違いはありません。芦毛とはいえ父シンボリクリスエスそっくりな馬体にフットワーク。父の本格化も秋になってから。一気に年度代表馬にまで上り詰めた、その成長力が受け継がれているかどうか。注目です。
他では7着ゴールデンチケットの踏ん張りはお見事。ダートでは怪物と噂のスーニに完勝しているだけに、大井のジャパンダートダービーへ進めばともに本命候補に挙げられること間違いなしでしょう。

人気馬

アンライバルドはまさかの12着。最後入れの大外枠でスタートは無難なもの。岩田騎手がのしを付けて先団を目指しましたが内側各馬の反応が良くそのままスピードに乗せていくと1,2コーナーで大外を周らされる不利を受けそうな雰囲気を察知したのか、結局後方の位置取り。ここで前半の扶助の分だけ馬が行きたがる素振りを見せましたが、バックストレッチに入る辺りでは折り合いもピタリ。ここは岩田騎手の好判断でしたが、勝負どころで外からナカヤマフェスタに捲って出られたところで仕掛けが遅れ外から蓋をされてしまう格好に。更にはすぐ前方を走っていたアイアンルックの動きにも対処しきれない始末で快調に飛ばす先行した1、2着馬にとことんまで遅れをとる形に。私見を申し上げますれば、この時点で馬の気持ちが萎えてしまったものと思います。スムーズにリズム良くレースを進めた上位入線馬達とは対照的な内容。1番人気であるが故にマークが厳しくなるのは分かりきっていたはずで、岩田騎手の騎乗には不満が残ります。しかしながら、そこで身動きが取れなくなってしまうことこそがダービーという日本一の大舞台で背負う重圧なのでしょう。来年以降の岩田騎手のダービー制覇に期待致します。
極悪馬場で1番人気馬が不可解な惨敗を喫した今回のダービーは、世代の能力を測る物差しにはなりえないというのが、各所の評価のようですが、決してそんなことはなく、アンライバルドを除いたそれぞれの優駿達が現時点での能力をいかんなく発揮できた、ダービーのダービーたる所以が見られた優秀なレースだったというのが、総括です。