天皇賞
マイネルキッツが波乱を演出。父チーフベアハートに母父サッカーボーイと、長距離をこなす下地こそありましたが、これだけの快走を予測できた人がどれほどいたことでしょう。前走日経賞ではアルナスラインと僅差の2着に飛び込み、そのアルナスラインが今回差のない4番人気に推されていた点からも、人気の盲点と呼べなくはないのでしょうが、坂の下りで有力各馬が仕掛けた時も鞍上松岡騎手の手綱は引っ張りきり。それでも3,4コーナー4、5番手までどんどん進出。展開に乗じて浮上したというレース内容でもなく、実力でもぎ取った勝利と見て間違いありません。それだけに、驚きなのですが。
松岡騎手は返し馬での気配の良さを勝因に挙げていました。騎手の扶助なしではレースでやる気を見せない厄介な気性の持ち主。それゆえに、いつも後方集団からの競馬を余儀なくされていた馬。この大一番で前向きに走り中団からの競馬を見せ3,4コーナーでは騎手がそのやる気をセーブするような体勢にまで。この形を取れなかったがために、前線マンどまりだったということなのでしょう。元々力はあったと陣営は口を揃えます。次走は宝塚記念になるようですが、この前向きさを再び発揮できれば天皇賞がフロックであったという声は一蹴されるでしょう。余談ですが重賞未勝利馬の勝利は80年ニチドウタロー以来29年ぶりの快挙でした。
2着アルナスライン。スタート一息も蛯名騎手が積極的に手綱を動かして中団をキープ。力んで惜敗した菊花賞が頭をよぎりましたが、そこからも完璧に流れに乗せて見せました。アサクサキングスをマークする形でレースを進めたのは勝利したマイネルキッツと同様。目標をあっさりと抜き去りゴール前では内のマイネルに照準を切り替えて併せ馬の形に。しかし脚色は同じでした。内外の差、と思いたいところですが、果たしてどうだったでしょう。今回は相手が一枚上手だったと認めるべきかと思います。しかしながら日経賞で戻った前向きさが、馬具を外した今回も健在だった点に、完全復活を感じさせます。その前向きさを奇しくも同じようにこのレースで発揮したマイネルキッツに敗れてはしまいましたが、紙一重の差。やはり能力はG1級です。
3着ドリームジャーニー。鞍上池添騎手の手応え通り、距離は持ちました。しかし持ち味の決め手を最大限に活かすには中距離がベストです。宝塚記念では主役の一頭になるでしょう。
4着サンライズマックスの快走も驚きに値します。重賞3勝で賞金は充分に足りているはずで、長距離をこなしたことは今後G1戦線での路線選択を広げる意味で大きいです。叩き良化型もハッキリしました。
5着ジャガーメイルは現状これが精一杯でしょう。キャリアも浅いので来年、再来年とまだまだチャンスはあります。当面は重賞のタイトルを手にしたいところ。
人気馬
1番人気アサクサキングスは9着。よどみないペースでレースが流れ、向こう正面で13秒台のラップが刻まれようとした時に、馬任せに先行集団に取り付ける積極的な競馬。ステイヤーとしての才能を信じた四位騎手の騎乗法に異論はなく、人気馬として妥当なもの。それだけに直線入り口で早々に失速してしまったことは意外で、前年を上回る走破時計を記録してはいるものの、最後は勝ち馬から0.9秒差のゴール。能力を出し切れたものとも思えず、あるいは今季2戦の疲れが抜け切っていなかったかとも思わせました。私見を申し上げますと、一週前時点での馬体が寂しく映りました。何にせよ、立て直しを迫られそうです。
2番人気スクリーンヒーローは14着。アサクサキングスをマークするように積極的な競馬を見せましたが、やはり直線入り口で急失速。鞍上横山典弘騎手は距離を敗因に挙げませんでしたが、果たしてどうでしょうか。判断に迷う結果です。
3番人気モンテクリスエスは12着。道中いかにも気分の良さそうな追走で、ペースも速くなり展開も絶好かと思われましたが、鞍上武豊騎手のゴーサインにも反応が鈍く、これまた急失速。ちょっと分かりません。大外へ行ったのは手応えが悪く前にいる馬たちをパスする脚が無かったからですね。「大外ぶん回し」なんて言う輩は競馬を辞めて欲しいです。